A08-01:業者が何社も関わる仕事で、社長にしか決められないこと
業者は、それぞれきちんと仕事をした。それでも、全体はうまく回らない。
頼む会社が増えると、会社と会社のあいだに、誰も受け持たない仕事が生まれます。求人を例にお話しします。
第7章の最後に、頼む前に社内で「誰が決めるか」を決めておく話をしました。
頼む先が1社なら、それで回ります。けれど、求人では、何社にも頼むことがよくあります。
第6章では、ホームページに何を載せるかをお話ししました。
この章では、そのページに人を連れてきて、採用が決まるまでを、社長がどう回すかをお話しします。
3社とも、きちんと仕事をしている
求人に力を入れるとき、こんな頼み方をすることがあります。
お客様向けのホームページとは別に、求人のためのページを1枚作る。広告を見た人が最初に開き、読み進めて、そのまま応募するためのページです。LP(ランディングページ)と呼ばれます。くわしくは第5章でお話ししました。
そのLPへ人を連れてくるのが、SNS広告や、地域に配るチラシです。頼み先は、たとえば3つに分かれます。
- LPと応募フォーム:A社
- SNS広告:B社(YouTubeやTikTok、Instagramなどに流れる、短い動画の広告です)
- 地域に配るチラシ:C社
3社とも、手は抜きません。それでも、応募は来るのに、採用が決まらない。全体で何が起きているのかを、誰も説明できない。業者が何社も関わる仕事では、こういうことが起きます。
決まらない理由は、募集の条件にある
断られたり、辞退されたりした理由をたどると、広告でもLPでもなく、募集の条件に行き着くことが少なくありません。
働き方が、希望と合わない。家から遠い。住まいの補助が足りない。
これは、業者には変えられません。変えられるのは、社長だけです。
LPに何を載せるかは、第6章でお話ししました。
ここで見てほしいのは、載せる前の条件そのものです。その条件は、来てほしい人の希望に合っているか。広告を出す前に、社長が確かめます。
会社と会社のあいだは、誰も受け持っていない
SNS広告の動画を替えると、LPで読まれる場所も変わります。動画を見た人は、その続きをLPで確かめに来るからです。会社の考え方を語る動画なら、先輩社員の声が読まれる。仕事の中身を見せる動画なら、一日の仕事の流れが読まれる。動画とLPは、つながっています。
たとえば、経験のない人に向けた動画に替えたとします。来るのは、「経験がなくても大丈夫か」「仕事はどうやって覚えるのか」を知りたい人です。ところが、LPが経験のある人向けのままだと、その答えが見当たりません。せっかく動画で呼んだ人が、応募せずに帰ってしまいます。
動画を替えたら、LPも合わせて直す。本当は、ここまでがひと続きの仕事です。けれど、動画はB社、LPはA社。この「合わせて直す」は、たいてい、どちらの契約にも入っていません。
ほかにも、こんなことが起きます。
- 条件を変えたのに、LP・チラシ・求人票のどこか1か所だけ、古いまま残る。
- 始めるときに決めたことが、担当者が替わると引き継がれない。
- 「比べてみよう」と決めた結果を、誰も出さないまま終わる。
誰かが悪いのではありません。会社と会社のあいだを、誰が受け持つか。それを決めていないだけです。
全体を見られるのは、社長だけ
A社が知っているのは、LPに来てからのことです。B社が知っているのは、広告が見られた回数や、押された回数。C社が知っているのは、チラシを何枚配ったか。誰を採ったかを知っているのは、社長です。全部を知っているのは、社長だけです。
応募する人の中には、広告を何度か見て覚えていて、あとから電話をかけてくる人や、社員の紹介で来る人もいます。こうした人は、どの会社の数字にも残りません。面接で「どこで知りましたか」と聞かないと、わからないのです。
数字に残らないことは、人に聞くしかありません。これは、業者には代われない仕事です。
何を成功とするかは、頼む前に決める
応募の数で見るか。狙った人が来たかで見るか。長く働いてくれるかで見るか。どれで見るかによって、同じ結果が、成功にも失敗にも見えます。長くはいない人でも、会社にとって意味のある採用はあります。
狙いが、採用の数だけとは限りません。いろいろな業者のやり方を間近で見て、いずれは自社でできるようにしたい。そういう狙いも込めて頼んだのなら、採用の数が届かなくても、目的の半分は果たせています。何を成功とするかは、いくつあってもかまいません。
何を成功とするかが決まっていないと、各社は自分の数字で報告します。B社は押された回数を、A社は応募の数を。どれも正しい数字です。でも、社長が知りたいことではありません。
何を成功とするか。頼む前に社長が決めて、すべての会社に伝えておきます。
1社にまとめるか、分けるか
1社にまとめれば、会社と会社のあいだの問題は消えます。でも、作った会社が、自分の成果を自分で測ることになります。自分に都合の悪い数字は、出しにくいものです。分けて頼めば、別の会社の目が入ります。それぞれの会社のやり方を、比べながら学ぶこともできます。
分けるなら、あいだを誰が受け持つかを、最初に決める。まとめるなら、悪い数字も出してもらう約束を、最初にする。どちらを選ぶかは、社長が決めます。
筆者の余談
広告掲載を始めてからしばらくして、私はメモに、こんな見立てを書きました。「40代より上は、InstagramとFacebook。30代は、TikTok。会社の考え方を前に出すと、経験の長い人に届く」。
広告掲載終了後に、応募した人を一人ずつ見直すと、ほぼこのとおりでした。
当たったと言いたいのではありません。書いていなければ、あとで「やっぱりそうだった」と思うだけで、確かめようがなかったはずです。見立ては、その場で、日付をつけて書いておく。頼む会社が何社あっても、これは社長が自分でできることです。
この記事のまとめ
- 業者がそれぞれきちんと仕事をしても、全体がうまくいくとは限らない。
- 決まらない理由の多くは、募集の条件。変えられるのは社長だけ。
- 会社と会社のあいだは、決めておかないと誰も受け持たない。
- 数字に残らないことは、「どこで知りましたか」と聞いて記録する。
- 何を成功とするかは、頼む前に社長が決めて、すべての会社に伝える。業者のやり方を学ぶことも、立派な目的になる。