A08-05:条件の競争から抜け出す

数字で並んだら、言葉にしにくいもので選ばれる。

求人サイトで給料や休みの数字を並べられると、大きな会社にはかなわない。そう感じていませんか。数字の競争から抜け出すとは、条件を隠すことではありません。

前の記事では、来てほしい人を、働き方で描く話をしました。

「A08-04:来てほしい人は、社長が決める」

今回は、その人に、何で選んでもらうかの話です。

目次

数字では、もう横並び

給料や休みは、相場に合わせると、どの会社も似た数字になります。求人サイトでは、その数字が一覧に並び、横に比べられます。外の求人媒体が、条件で比べられる場所だという話は、第6章でお話ししました。

「A06-02:求人にホームページが効く理由」

同じ数字で競えば、上げられる会社が勝ちます。中小企業が数字を上げ続けるのは、長くは続きません。

それでも、条件は先に見せる

数字の競争から抜け出すといっても、条件を隠すわけではありません。応募する人は、どんな入口から来ても、最後は給料と働き方を確かめます。

通える範囲、住まいの補助、働き方。会ってから合わないとわかる条件は、応募の前に見せておきます。書いていない条件は、電話で初めて伝わり、断る手間になります。応募の流れを社内で通しておく話は、前々回にお話ししました。

「A08-03:求人にお金をかけるなら、広告より先に受け皿」

条件は、選んでもらう理由というより、ふるいです。先に見せておけば、合わない人は、応募の前に自分で離れていきます。

差がつくのは、言葉にしにくいもの

数字で並んだら、差がつくのは、数字にならないものです。どんな人と働くのか。職場の雰囲気。会社が大切にしていること。何を載せるとよいかは、第6章でお話ししました。

「A06-03:何を載せると、人は応募したくなるか」

そこでお伝えした決め手は、「ここで働く自分が、想像できるか」でした。ただ、雰囲気や考え方は、言葉にしようとすると、どの会社も似た言い方になってしまいます。次は、想像できる言葉への直し方です。

「入ったら自分はどうなるか」がわかる言葉に直す

求人に書く言葉は、会社から見た言い方になりがちです。けれど、読む人が知りたいのは、働き始めた自分に何が起きるか、です。

  1. 「研修制度あり」 → 「最初の1か月は、先輩が横について教えます」
  2. 「風通しのよい職場」 → 「新人の意見でも、朝の打ち合わせで取り上げます」
  3. 「チームワークを大切にしています」 → 「困ったら、その場で誰かが手を貸します」

第3章で、会社の自慢を、お客様にとってのよいことに直す話をしました。「オレすごい広告」を「あなたのために広告」に変える話です。相手が求職者でも、考え方は同じです。

「A03-04:自社の強みは、「お客様視点」の言葉に翻訳する」

「入ったら自分はどうなるか」は、時間で見せると、さらに伝わります。

まず、入る前と、入ってからの違いを見せます。長く働いている社員に「入る前は、何が不安でしたか」「いまは、どうですか」と聞いて、その答えを、先輩の生の声として載せます。読む人は、同じ不安を持つ自分を、その先輩に重ねます。

次に、入ってからの将来像を見せます。最初の1か月は、何をするのか。半年たつと、何を任されるのか。1年後には、どうなっているのか。先が見えると、応募する人は、自分がその会社で過ごす時間を思い描けます。

言い換えるのは、本当のことの範囲です。実際と違うことを書けば、入ってから「思っていたのと違う」と、辞めてしまいます。

言葉にできるのは、社長だけ

言葉にしにくいものほど、業者に任せると、「楽しい職場です」のような、どの会社にも書ける言葉で埋まります。前の記事の余談でも触れたとおりです。会社が大切にしていることを知っているのは、社長です。

社長が自分で言葉にしにくいときは、長く働いている社員に、具体的な出来事を聞きます。「入ってすぐのころ、誰に、何を助けてもらいましたか」「辞めずに続けてこられたのは、どんな日があったからですか」。返ってきた答えが、そのまま求人の材料になります。読みやすく少し整えるのはかまいません。ただ、整えすぎると、どの会社の先輩も同じ声になってしまいます。

大きな問いで聞くと、「人間関係がいいです」のような、どこにでもある答えが返ってきます。具体的な出来事を聞くと、その会社にしかない言葉が出てきます。

数字の競争から抜け出すと決めるのも、言葉にしにくいものを言葉にするのも、社長の仕事です。

筆者の余談

散らかっていても、現場の写真を

求人のページを作るとき、きれいなフリー素材を使いたがる社長がいます。理由を聞くと、「職場が散らかっているから」「顔を出すのは恥ずかしいから」「撮影がめんどうだから」。

気持ちは、よくわかります。けれど私は、現場の写真には力があると思っています。散らかった作業台も、少し照れた笑顔も、そこで本当に働いている人の姿です。応募する人が見たいのは、きれいな職場ではなく、自分が働くことになる職場です。

本物の写真が、なぜよく読まれるのかは、第5章でお話ししました。

「A05-07:人を集めても、受け皿が悪いと成果は出ない」

この記事のまとめ

コレだけ!1分で復習
  • 給料や休みの数字は、もう横並び。数字だけでは差がつかない。
  • 条件は隠さない。落ちる理由になる条件は、応募の前に見せる。
  • 差がつくのは、職場の環境や雰囲気、会社が大切にしていること。
  • 会社の言い方ではなく、「入ったら自分はどうなるか」がわかる言葉に直す。
  • 言葉にするのは社長。迷ったら、長く働く社員に具体的な出来事を聞く。
小田朋和
有限会社イオアート 代表取締役・IT経営コンサルタント
人情の街として知られる東京都葛飾区を拠点に創業25年以上。中小企業経営者のIT経営をサポート。「売り込まない・正直に・わかりやすく」をモットーに、経営者の隣でITを経営の力に変えるお手伝いをしています。行政機関・経営者団体・大学・高校からの講師依頼も多く、社長より「先生」と呼ばれることの多い25年でした。
まず現状を聞かせてください

「うちはどこから手をつければいい?」
それを一緒に整理するところから始めます

ツールを売り込んだり、いきなり大きな提案をしたりはしません。まず御社の今の状況をうかがって、何が問題で、何から始めるべきかを一緒に考えます。葛飾区で25年以上、経営者の隣でITを見てきたからこそできる、現場に寄り添った相談です。

※葛飾区周辺(足立区・江戸川区・三郷市・八潮市・松戸市など)へは、初回訪問時の出張料も無料です。それ以外の地域も対応しています。その場合は、交通費の実費だけご負担ください。

  • URLをコピーしました!
目次