A06-03:何を載せると、人は応募したくなるか
採用ページを作ろう、となったとき。多くの会社が、給与や勤務時間といった条件を並べて終わりにします。
でも、応募してくる人が本当に知りたいのは、その先にあります。
給与や条件だけでは、人は決めきれない
前回、応募者は必ず会社のホームページを見る、というお話をしました。では、何を載せれば、人は「この会社で働きたい」と思うのでしょうか。
給与、休日、勤務地。こうした条件は、もちろん大切です。でも、これらはハローワークや求人情報誌にも書いてあります。応募者が会社のホームページでさらに知りたいのは、その先のことです。「ここで働く自分が、想像できるか」
条件は、入口にすぎません。応募を決める本当の決め手は、別のところにあります。
働く人の顔が見えると、安心する
人が会社を選ぶとき、いちばん気になるのは「誰と働くのか」です。
どんな人が働いているのか。職場はどんな雰囲気なのか。一日は、どんな流れで進むのか。これが見えるだけで、応募者の不安はぐっと減ります。
たとえば、こんなものを用意します。先輩社員の声。「なぜこの会社に入ったか」「どんなところが好きか」を、本人の言葉で。先輩社員の一日のスケジュール。朝から夕方まで、どんな流れで働くのか。そして、実際に働いている現場の写真。これらがあるだけで、応募者は「自分がここで働く姿」を、ぐっと想像しやすくなります。
最近は、こうした素材を動画で見せる会社も増えてきました。スマホのカメラも画質がよくなり、特別な機材がなくても、現場の様子をそのまま映せるようになったからです。先輩社員が自分の言葉で語る短い動画は、文字や写真よりも、ずっと多くのことを伝えます。
ただ、見栄えよく撮るには、ちょっとしたコツがあります。たとえば、現場では音をきれいに録るのが意外とむずかしい。照明の当て方ひとつで、表情の見え方も変わります。そのあたりは、慣れた人に相談しながら進めると、きれいに仕上がります。
そして、どの素材にも共通して効くのが、本物であることです。どこかで借りてきた、笑顔のモデルの写真ではありません。実際にそこで働いている人の顔、本当の仕事場の様子。作りものでない素材からは、その会社の空気が伝わります。応募者は、そこに自分がいる姿を重ねるのです。
社長の考えが、いちばん人を動かす
働く人の顔の次に、応募者が知りたいこと。それは、社長の考えです。
この会社は、何を大切にしているのか。社長は、どんな思いで会社をやっているのか。意外に思われるかもしれませんが、給与の額よりも、この「会社が向いている方向」に心を動かされて応募してくる人は、少なくありません。
お金だけでつながった人は、もっと条件のいい会社が見つかれば、離れていきます。でも、会社の考えに共感して入ってきた人は、長く根を張ってくれます。
同じ業種でも、求める人は会社によって違う
ここで、大事なことをお話しします。会社の考えをはっきり打ち出すほど、それに合う人が集まり、合わない人は自然と離れていきます。結果として、入ってからの「こんなはずじゃなかった」が、減るのです。
たとえば、同じ飲食店でも、会社によって求める人はまるで違います。
一人ひとりのお客様に、静かに丁寧に向き合う、隠れ家のようなお店。活気とスピードで、次々とお客様を迎える、にぎやかな繁盛店。
どちらがいい、という話ではありません。でも、向いている人はまるで違います。前者には、落ち着いて気配りのできる人。後者には、テキパキと体を動かせる人。
もし、お店がどちらを目指しているかをホームページではっきり伝えていれば、それに合う人が応募してきます。逆に、何も伝えなければ、合わない人まで来てしまい、お互いに時間を無駄にしてしまいます。
会社の向いている方向を、ことばにして見せる。いわば、経営理念ですね。それが、合う人と出会う近道なのです。
自社の良さは、まわりに聞くと見えてくる
「うちの会社の良さなんて、特にない」そう思う社長も、いるかもしれません。でも、それはたいてい、自分では気づいていないだけです。
会社の良さは、社長や経営幹部の思いだけで決めなくてもかまいません。今いる社員に聞いてみる。「うちの会社の、いいところはどこだと思う」と。アンケートを取ってみるのもいいでしょう。仲のいい取引先に、「うちのいいところって、どこですか」と尋ねてみるのも効きます。
外から見た自社は、中にいる自分たちとは違って見えるものです。自分たちだけでは気づかなかった会社の良さに、はっと気づかされることが、よくあります。その気づいた良さこそが、採用ページに載せる、いちばんの言葉になります。
ひとつだけ、忘れないでください。協力してくれた社員や取引先には、きちんとお礼を伝えること。聞いて終わりにしないことが、次の協力にもつながります。
飾らず、ありのままを見せる
採用ページを作るとき、つい、よく見せたくなります。実際よりも、立派に。
でも、ここは気をつけてください。話を盛って、実際と違う姿を見せてしまうと、入社した人は「思っていたのと違う」と感じ、早くに辞めてしまいます。集めることはできても、続かないのです。
それよりも、等身大の会社を、正直に見せるほうがいい。いいところも、まだ足りないところも、ありのままに伝える。そのほうが、それを受け入れて長く働いてくれる人が来ます。
正直であることは、採用でも、いちばんの強みになります。
外の入口から、採用ページにつなぐ
ここまで、採用ページに何を載せるかをお話ししてきました。最後に、そのページにどう人を呼び込むかにも、少し触れておきます。
最近は、地域に配るチラシや、エリアを絞ったSNS広告で、採用ページに人を呼び込む会社もあります。チラシやSNS広告で気づいてもらい、くわしくは自社の採用ページで見てもらう。外の入口と自社のページをつなぐ、という考え方です。
こうした採用専用のページは、採用LP(ランディングページ)と呼ばれることもあります。第5章でお話しした「A05-05:広告を打つなら、受け皿はLP1枚」の、採用版です。売上アップのために広告とセットで使うLPと区別して、採用に使うものを採用LPと呼びます。目的が売上から採用に変わっただけで、考え方は同じです。
載せるのは「働く前に知りたいこと」
何を載せると、人は応募したくなるか。見てきたことを、ひとことでまとめます。
応募者の立場に立って、「自分がこの会社で働く前に、知っておきたいこと」を載せる。働く人の顔、社長の考え、会社の向いている方向、そして飾らないありのままの姿。
それがそろっていれば、応募者は安心して、応募という一歩を踏み出せます。せっかく求人媒体で見つけてもらっても、肝心の採用ページが中身のないものでは、応募の一歩手前で去られてしまいます。中身のそろった採用ページは、応募者を取りこぼさない受け皿になるのです。
そして、会社が大切にしていることに共感した人が集まる。それは、会社にとって、何よりの財産になります。
この記事のまとめ
- 応募者が知りたいのは給与・条件の先。「ここで働く自分が想像できるか」が決め手になる。
- 先輩社員の声・一日の流れ・現場の写真や動画を、借り物でなく本物でそろえる。
- 会社が向いている方向(経営理念)をはっきり打ち出すほど、合う人が集まりミスマッチが減る。
- 自社の良さは、社員や取引先に聞くと見えてくる。協力してくれた人へのお礼を忘れずに。
- 話を盛らず、等身大を正直に見せる。そのほうが長く働く人が来る。
- チラシやSNS広告で採用ページ(採用LP)に呼び込む手もある。中身のそろったページは応募を取りこぼさない受け皿になる。