A06-05:広報は、自分から発信する時代

広報は、待つだけのものではありません

メディアに見つけてもらう。それも広報です。けれど今は、会社が自分から発信できる時代になりました。プレスリリースやブログで、自分の言葉を世の中へ届ける。その始め方を、お話しします。

目次

メディアに頼るだけが広報ではない

前の記事では、メディアに取り上げてもらう話をしました。記者やテレビに見つけてもらい、取材される。これは、広報の大きな力です。

ただ、取材は相手があってのことです。いつ声がかかるかは、こちらでは決められません。待っているだけでは、何も起きない月もあります。

そこで、もうひとつの道があります。会社が自分から、世の中に発信することです。

昔は、自分から情報を出すのは、簡単ではありませんでした。新聞社やテレビ局に知り合いがいなければ、取り上げてもらえない。発信の入口は、限られた人にしか開かれていなかったのです。

けれど今は、その入口が大きく広がりました。会社が自分の言葉で、世の中に届けられる時代です。取材を待つだけでなく、自分から出す。この2つを両輪で回すことが、これからの広報です。

発信の手段は、もう手元にそろっている

では、自分から発信するには、どんな方法があるのでしょうか。むずかしく考える必要はありません。手段は、もう手元にそろっています。

  • プレスリリース。新聞やテレビ、ネットの記者に向けて、出来事をお知らせする
  • 自社のホームページやブログ。お客様や、これから出会う人に向けて、自分のペースで書く
  • SNS。日々のことを気軽に伝え、見ている人とのつながりを育てる

どれも、特別な道具は要りません。パソコンやスマホがあれば、今日からでも始められます。費用も、ほとんどかからないものばかりです。

この3つは、向いている相手が少しずつ違います。プレスリリースは記者に向けて、まとまった「ニュース」を伝えるもの。ブログは、自分の言葉でじっくり伝えるもの。SNSは、軽やかに、こまめに伝えるものです。

ブログには、書き方に大きく2つの形があります。何を書くか迷ったら、この2つのどちらかから選んでみてください。

①専門の知識を伝える形

その分野のプロとして、役立つ知識を連載していきます。「この会社はくわしい」と信頼されます。

  • お客様からよく聞かれる質問への答え
  • これまでの仕事の事例
  • 商品やサービスの選び方
②人柄を伝える形

日々のできごとや、働く人の様子を書いていきます。「こういう人たちがやっているのか」と親しみを持ってもらえます。

  • スタッフや社内の紹介
  • 地域やイベントの話題
  • 季節の行事やふだんのできごと

どちらか一方でも、両方を混ぜてもかまいません。SNSの使い分けについては、集客の章でくわしくお話ししました。日々の投稿は売り込みより雑談を多めに、というあの話と、同じ考え方です。

ただ、ブログでいちばんむずかしいのは、何を書くかではありません。続けることです。多くの会社が、はじめの何記事かで止まってしまいます。けれど、これも仕組みで乗りこえられます。誰が、何を、いつ、どのように書くか。これを先にルールとして決めてしまえば、ネタに困ることもなく、長く続けられます。実際に、数名のスタッフが交代で、20年近くブログを書き続けている会社もあります。

この記事では、このうちプレスリリースを中心にお話しします。記者に向けて発信する、いちばん広報らしい手段だからです。

プレスリリースは「ニュースとして書く」

プレスリリースとは、会社が世の中に向けて出す「お知らせ」のことです。新聞やテレビ、ネットの記者に「こんな出来事がありました」と知らせる文書だと思ってください。

大事なのは、宣伝文ではなく、ニュースとして書くことです。「うちの商品はすごい」と書いても、記者は動きません。記者が探しているのは、読者や視聴者が知りたいことだからです。前の記事では、どんな切り口だと取り上げられやすいかをお話ししました。今回は、それを「いつ出すか」という話です。

中小企業がプレスリリースに挑戦するとき、ぜひやっていただきたいことがあります。それは、どんなときにニュースを出すか、社内で先に決めておくことです。

たとえば、こんなときです。

  • 新しい商品やサービスを始めたとき(初めて)
  • 季節に合わせた商品や取り組みを始めたとき(季節)
  • これまでにない製法や、めずらしい取り組みを生み出したとき(独自)
  • 価格を大きく見直したとき(いま話題のこと)
  • 創業の節目を迎えたとき。長く続いていること自体がニュースになります(人の物語)
  • 賞をいただいたり、地域や社会のためになる取り組みを始めたとき(地域・社会)

ここに挙げたのは、ほんの一例です。前の記事でお話しした、取り上げられやすい切り口を思い出してください。新しいか、めずらしいか、その会社ならではか。あのときの考え方と、同じことを言っています。新しく覚えることはありません。会社によって、ニュースになる出来事は違います。すべてを数え上げる必要はありません。大切なのは、「こういうことが起きたら出す」と先に決めておくことです。

なぜ、先に決めておくとよいのでしょうか。大企業には広報の担当者がいて、何を出すかの判断が、組織にたまっています。けれど中小企業では、社長やわずかな人数で、ほかの仕事と兼ねながら広報を回すことがほとんどです。専任の担当者は、まずいません。

だからこそ、ルールが効きます。紙1枚でも基準を決めておけば、忙しくても、担当が代わっても、出すべきときに迷いません。その場の頑張りに頼らず、仕組みで回せるようになります。せっかくの機会を、うっかり見過ごさずにすみます。

もうひとつ、中小企業の社長に、お伝えしたいことがあります。「うちの話なんて、ニュースにならない」と、つい引っ込めてしまう方が多いのです。けれど、それはもったいない。大企業なら、よほど大きな話でないと記事になりません。けれど地元の新聞や、その業界の専門誌にとっては、下町の工場が新しい製法を生み出したことも、長年続くお店が新しいメニューを出したことも、立派なニュースです。前の記事の「まずは地元から」を思い出してください。遠慮こそが、機会を逃します。

では、プレスリリースは、どう出すのでしょうか。流れはこうです。まず、自分のホームページに、その記事を書きます。そのうえで、同じ内容を配信サービスに送り、メディアにも届けます。自社サイトに残し、外にも広げる。この2つを合わせて行うのが基本の形です。

今は、この配信も、ずいぶん手軽になりました。配信サービスを使えば、たくさんのメディアに、まとめて届けられます。国内では、ひとつのサービスがほぼ標準になっていて、上場企業の6割を超える会社が使っているほどです。こうした仕組みがあることを知っておくと、いざ出そうというときに迷いません。

そして、プレスリリースには、うれしい好循環があります。出したリリースがメディアの目に留まり、取材を受けられたとします。このとき、放送や掲載の内容を、自社の宣伝に使ってよいかどうか、先に相手へ確認しておきます。許しをいただけたら、「テレビで紹介されました」「新聞に載りました」と、お客様に知らせることができます。そして、その「取り上げられた」という出来事が、また次の発信のネタになります。発信が取材を呼び、取材がまた発信になる。一度回りはじめると、ぐるぐると続いていきます。

ただし、出し方や書き方には、やはりコツがあります。ニュースとして読まれる書き方、写真の添え方、出すタイミング。このあたりは、慣れた人に相談すると近道です。

続けることが、いちばんの広報になる

発信を始めると、すぐに反応がほしくなります。けれど、広報は、一発の打ち上げ花火ではありません。一度の大きな話題より、地道な発信を積み重ねるほうが、ずっと確かな力になります。

これは、集客の章でお話しした、アクセスがじわじわと伸びていく話と同じです。コツコツ続けた発信は、すぐには消えません。1つひとつの記事が、会社のことを伝える窓として、ずっと残り続けます。

発信を続けている会社は、それだけで信頼が積もっていきます。「この会社は、ちゃんと動いている」「ずっと情報を出し続けている」。そう見えること自体が、安心につながるのです。派手な1回より、地道な毎回。続けることが、いちばんの広報になります。

発信は、お客様以外も見ている

この章のはじめに、ホームページはお客様だけが見ているのではない、というお話をしました。発信も、同じです。会社が出し続けている情報を、見ているのはお客様だけではありません。

これから働きたいと考えている人は、その会社がどんな発信をしているかを見ています。取引を考えている会社も、提携先を探している会社も、見ています。記者やテレビも、日ごろの発信から「この会社はおもしろい」と気づきます。発信の積み重ねが、人を呼び、仕事を呼び、取材を呼ぶのです。

つまり発信は、ものを売るためだけのものではありません。会社の信頼を育て、人を引き寄せる。この章でお話ししてきた「売る以外の役割」を、いちばんよく果たすのが、自分からの発信なのです。

決めておく、貯めておく。広報は仕組みで回す

ここまで、ホームページで会社の信頼と人を育てる話をしてきました。最後に、ひとつだけ。

この章でお伝えした広報も、思いつきで頑張るものではありません。続けるには、仕組みが要ります。そして、その考え方は、この連載で何度も顔を出してきました。

ホームページを開いたあと、どう運用していくかを先に決めておく。広報のために、写真や文章を、ことが起きる前から記録しておく。そして今回の、リリースを出すきっかけを、社内のルールにしておく。

ばらばらの話に見えて、根っこは同じです。先に決めておく。先に貯めておく。その場の頑張りではなく、仕組みで回す。専任の担当者がいない中小企業ほど、この考え方が効きます。

派手なことは要りません。自分の言葉で、長く続ける。それが、いちばん確かな広報です。

運用や記録の話は、こちらの記事でくわしくお話ししています。あわせて読んでみてください。

この記事のまとめ

コレだけ!1分で復習
  • 取材を待つだけでなく、自分から発信する。この2つを両輪で回すのが、これからの広報です
  • 発信の手段はもう手元にあります。プレスリリース、ブログ、SNS。特別な道具は要りません
  • プレスリリースは宣伝でなくニュースとして書く。どんなときに出すかを、社内で先に決めておきましょう
  • 一度の話題より、地道な積み重ね。続けることが、いちばんの広報になります
  • 決めておく、貯めておく、仕組みで回す。専任のいない中小企業ほど、この考え方が効きます
小田朋和
有限会社イオアート 代表取締役・IT経営コンサルタント
人情の街として知られる東京都葛飾区を拠点に創業25年以上。中小企業経営者のIT経営をサポート。「売り込まない・正直に・わかりやすく」をモットーに、経営者の隣でITを経営の力に変えるお手伝いをしています。行政機関・経営者団体・大学・高校からの講師依頼も多く、社長より「先生」と呼ばれることの多い25年でした。
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ツールを売り込んだり、いきなり大きな提案をしたりはしません。まず御社の今の状況をうかがって、何が問題で、何から始めるべきかを一緒に考えます。葛飾区で25年以上、経営者の隣でITを見てきたからこそできる、現場に寄り添った相談です。

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