A07-04:制作会社の選び方と、頼む前の準備

いい発注の半分は、頼む前に決まる

安さ、立派さ、丸投げ。3つの落とし穴を避けて、頼む前の準備を整える。発注は、付き合いの始まりです。

前回は、「誰に頼むか」、制作会社の得意の違いをお話ししました。今回は、その続き。「頼む前に、自社で何を決めておくか」です。

いい発注の半分は、頼む前の準備で決まります。逆に言えば、準備しないまま頼むと、つまずきやすい。準備の中身を、順にお話しします。

目次

安さだけで選ぶと、かえって高くつく

何社かに見積もりを取ると、金額に差が出ます。このとき、いちばん安いところに飛びついてしまう。これが、よくある失敗の入口です。

安いには、安いなりの理由があります。中身が薄かったり、あとから「これは別料金です」と追加が続いたり、運用のサポートが含まれていなかったり。最初の金額だけ見て決めると、結局、あとからお金がかかって、高い買い物になることがあります。

本連載で何度かお伝えしてきたとおり、ホームページは「作る費用」ではなく「育てる費用」で見てください。一度作って終わりではなく、そこから長く付き合っていくものだからです。

立派な提案にも、落とし穴がある

安さの逆も、また落とし穴です。

あるとき、こんな相談がありました。ある専門の会社に相談したところ、分厚い資料が届いた。ものすごい分析量で、さすがプロだ、と感心したそうです。

ところが、その資料のとおりにホームページを作ろうとすると、とんでもない費用がかかるものでした。分析は立派でも、実際に作る現場のことを知らないと、絵に描いた餅になってしまう。高いお金を払って、結局は使えない資料が手元に残っただけ、ということが起きていたのです。

ですから、提案の分厚さや、分析の量で選ばないでください。見るべきは、その提案が「実際に、無理なく形にできるものか」。立派さではなく、現場を知っているかどうか。ここが効いてきます。

丸投げは、いちばんの失敗

そして、これがいちばん多い失敗です。「プロに頼むんだから、全部おまかせで」。

気持ちはわかります。けれど、丸投げすると、当たり障りのない、どこにでもあるホームページができあがってしまいます。なぜなら、本連載で繰り返しお伝えしてきたとおり、会社の中身、その会社だけの強みや実績は、会社の中にしかないからです。それを渡さなければ、誰が作っても、誰が頼んでも、すきまは当たり障りのない言葉で埋められてしまう。

これは、AIで作るときの話と、まったく同じです。AIに丸投げしても、業者に丸投げしても、結末は変わりません。丸投げは、手段を問わず、同じところに行き着くのです。

頼む前に、自社で決めておくこと

では、何を準備しておけばいいのか。

むずかしいことではありません。何を作りたいのか(目的)。どんな型のホームページにするのか。誰に向けて、どう運営していくのか。この連載で1つずつお話ししてきたことを、自社なりに決めておく。それだけで、発注は見違えるほどうまくいきます。

このとき、会社の軸、大切にしていることが、ひとことで言えるようになっていると、なお強いです。それが決まっている会社は、原稿を集めるのも速いし、途中で方針がぶれません。会社の土台については、第3章でくわしくお話ししました。よかったら、戻って読んでみてください。

作って終わりか、一緒に育てるか

相手を選ぶとき、見ておきたい視点があります。

ホームページの発注は、「1回の買い物」ではありません。「付き合いの始まり」です。公開してからが、本番だからです。だから、作って渡して終わりの会社なのか、そのあとも一緒に育ててくれる会社なのか。そこを見てください。

そして、その「一緒に育てる」がうまくいくかどうかは、じつは、頼む側の社内にもかかっています。

あるとき、よく似た2つの会社が、それぞれホームページを作りました。一方の会社では、社長が専務に「これはお前にまかせる」と任せきり、専務とこちらで二人三脚で、じっくり作り上げました。いいものができました。

もう一方の会社では、社長が「まかせた」と言いながら、できあがる途中で次々と意見を出し、方針が二転三転しました。結局まとまらず、間に立った息子さんが疲れ果てて、会社を去ってしまったのです。

違いは、技術でも、予算でもありませんでした。「誰が決めるのか」を、頼む前に、社内ではっきりさせていたかどうか。ホームページ作りは、社内の意思決定が一本にまとまっているかどうかが、想像以上に効いてきます。これも、頼む前の準備のひとつです。

まず、始めてみること

ここまで、たくさんお伝えしてきました。けれど、全部を完璧にやる必要は、ありません。大事なのは、たったひとつです。「何のために作るのか」を決めて、まず始めてみること。もし、うまくいかなくても大丈夫。この連載のはじめのほうでお話ししたとおり、ホームページは、いつでも直せます。家やビルと違って、こわくありません。だから、肩の力を抜いて、一歩を踏み出してください。

そして、どうか忘れないでいただきたいのです。

立派なホームページを作ることが、ゴールではありません。あなたの会社が、長い年月をかけて積み上げてきた仕事。その値打ちは、もう、あなたの会社の中にあります。ホームページは、その値打ちを、まだ出会っていないお客様に届けるための、道具にすぎません。

きれいに見せることより、あなたの会社の本当の良さが、ちゃんと伝わること。それさえできれば、十分です。あなたの会社には、もう、伝えるべき値打ちがあるのですから。

筆者の余談

ここまで書いてきて、思うこと

葛飾区とその周辺で商売をされている、中小企業の皆さん。その方々が、少しでもよいIT経営、よいホームページ作りができるように。地域へのささやかな恩返しのつもりで、私が25年のあいだに現場でためてきたことを、書き出してきました。

おかしなもので、書いているうちに「これも試してみたい」「あれも伝えたい」と、新しいことが次々と浮かんできます。また何か思いついたら、記事を足していくつもりです。だから、ときどき、のぞきに来てください。

オレたちの本当の冒険は、ここから始まる!

第1部 完

この記事のまとめ

コレだけ!1分で復習
  • 安さだけで選ぶと、追加費用や運用別料金で、かえって高くつく。
  • 立派な分析や分厚い提案にも落とし穴。「実際に形にできるか」で見る。
  • 丸投げがいちばん多い失敗。中身は会社にしかない。AIでも業者でも同じ。
  • 頼む前に「何を作り、どう運営するか」を自社で決めておく。
  • 発注は付き合いの始まり。一緒に育ててくれる相手を選び、社内で「誰が決めるか」も先に固める。
小田朋和
有限会社イオアート 代表取締役・IT経営コンサルタント
人情の街として知られる東京都葛飾区を拠点に創業25年以上。中小企業経営者のIT経営をサポート。「売り込まない・正直に・わかりやすく」をモットーに、経営者の隣でITを経営の力に変えるお手伝いをしています。行政機関・経営者団体・大学・高校からの講師依頼も多く、社長より「先生」と呼ばれることの多い25年でした。
まず現状を聞かせてください

「うちはどこから手をつければいい?」
それを一緒に整理するところから始めます

ツールを売り込んだり、いきなり大きな提案をしたりはしません。まず御社の今の状況をうかがって、何が問題で、何から始めるべきかを一緒に考えます。葛飾区で25年以上、経営者の隣でITを見てきたからこそできる、現場に寄り添った相談です。

※葛飾区周辺(足立区・江戸川区・三郷市・八潮市・松戸市など)へは、初回訪問時の出張料も無料です。それ以外の地域も対応しています。その場合は、交通費の実費だけご負担ください。

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